日本医科大学武蔵小杉病院 土佐眞美子先生 インタビュー(2/2)

日本医科大学武蔵小杉病院 土佐眞美子先生 インタビュー(2/2)

2018年05月28日 01時03分

専門医に聞く帝王切開の傷ケア|安全・簡単ケアでキレイな傷あとに第2回

シリコーンゲルシートを貼るだけで安心・簡単ケア

肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)やケロイドは予防できるのですか?

例えば、退院後からシリコーンゲルシートを傷あとに貼るというセルフケアが考えられます。この方法なら、薬をできるだけ使いたくない授乳中でも安心です。
当院の産婦人科で2回続けて帝王切開で出産し、2回ともお腹を縦に切開した人を対象に、調査を行いました。
対象者のうち、1回目の出産後に傷が赤く盛り上がった方々、つまり、肥厚性瘢痕やケロイドになるリスクの高い方々を2つのグループに分けました。
片方のグループの方には、手術直後から行っていた傷の部分に紙テープ(サージカルテープ)を貼るケアを抜糸後も続けてもらい、もう1つのグループの方は、抜糸したあと、シリコーンゲルシートに貼りかえました。そして半年後、肥厚性瘢痕の発生率を調べました。
その結果、シリコーンゲルシートを使うほうが、肥厚性瘢痕やケロイドになる割合が低かったという結果にいたりました。
一般的に、病院では帝王切開後の傷に紙テープを貼ってくれます。ただ、こういう調査結果を見ると、肥厚性瘢痕・ケロイドを予防するには、退院したら市販のシリコーンゲルシートなどに貼りかえるのも予防法としてよいかもしれませんね。そして少なくとも3か月は貼り続けてほしいと思います。
シリコーンゲルシートは薬剤ではありませんので、授乳中でも安心です。シートを貼っておくだけなので、育児に追われているお母さんでも簡単に傷あとのケアができます。

育児中のお母さんは、自分のケアがついつい後回しになってしまいますよね。

傷あとが痛んだり、かゆかったりしても、「傷くらいのことで」とがまんして、がまんが限界にきて初めて受診されるお母さんがとても多いように感じます。
赤ちゃんのお世話で大変なこととは思いますが、帝王切開での出産を頑張ったご自分へのいたわりも大切にしていただきたいですね。その第一歩が、傷あとのセルフケアです。
そして、傷あとで気になることがあれば、早めに形成外科を受診してください。
当院の産婦人科で手術を受け、1か月目の傷あとが「赤い」「硬い」「盛り上がっている」のいずれかに当てはまる場合に、ステロイド薬のテープによる治療を行いました。すると、1年後の肥厚性瘢痕・ケロイドの発生率が下がることがわかりました。早く治療を始めれば、予防できる確率も高くなります。
さらには、妊婦さんやご家族には、出産前に帝王切開後の傷ケアの必要性について、出産準備のひとつとして、知っておいていただきたいと思います。

【プロフィール】

土佐眞美子(とさ まみこ)先生
現 日本医科大学付属病院 形成外科講師
 
専門はケロイド、瘢痕治療。日本形成外科学会専門医。2006年より日本医科大学武蔵小杉病院にて、産婦人科手術後の肥厚性瘢痕・ケロイドの早期発見、早期治療のための「スカーコントロール外来」を立ち上げ、帝王切開、腹腔鏡手術をはじめとした産婦人科手術後の傷あとケアに携わっている。

最終修正日 2018/06/19(火) 00:13